悪質なM&A会社に騙されないためには?

私たちはM&Aアドバイザリー(助言)会社として、売り手企業または買い手企業のどちらか一方にのみアドバイスを提供します。これは、売り手と買い手の利益が相反するため、両者を同時に満足させる助言を行うことができないためです。
 
一方、仲介会社は売り手企業と買い手企業の双方と契約を結び、両社を引き合わせたうえで、それぞれに取引に関するアドバイスを提供します。仲介会社は成功報酬として、売り手企業・買い手企業の双方から手数料を受け取る仕組みになっています。
 
通常の考え方では、このような仲介会社の取引は利益相反にあたります。しかし、日本では現在、この手法が広く行われているのが実情です。
 
今回ご紹介する事例は、こうした双方から手数料を徴収する取引形態を悪用したケースになります。

「売り手からは1円も報酬をいただきません」その裏には何がある?

M&A会社の営業活動において、次のようなアピールをする企業を見かけることがあります。
 
「売り手企業からは1円も報酬をいただきません」
「手数料は買い手企業からのみ頂くので、売り手企業には無料でM&Aのサポートを提供します」

 
この営業トークは、売り手企業にとって非常に魅力的に聞こえるかもしれません。
 
しかし、本当にクライアントの利益を優先し、徴収できる手数料を放棄してまで尽くす会社があるのでしょうか?
 
実は、この「売り手企業からは1円も報酬をいただきません」という宣伝の裏には、売り手企業を巧みに欺く仕組みが隠されてる場合があります。
 
その一例として、買い手企業とあらかじめ「売却想定価格」を設定し、実際の買収価格がその想定価格より低くなった場合、差額の半分を成功報酬として受け取る方法があります。
 
例えば、定価3000円のシャツをセールで2000円で購入した場合、「値引き分の1000円のうち500円を成功報酬として支払ってください」というのと同じ仕組みです。
 
この手法によって、仲介会社は売り手企業には「無料」と謳いながら、実際には会社を不当に安い価格で売却させ、裏では買い手企業と結託して利益を得ているのです。

ときには詐欺まがいのスキームも

「売り手からは1円も報酬をいただきません」
 
この言葉の裏には、どのような仕組みが隠されているのでしょうか。
 
仲介会社は、まず売り手企業の事業内容を簡単に調査し、売却想定価格を提示します。例えば、営業利益が5000万円、純現預金が1億円ある企業の場合、市場価格の目安はマルチブル評価に基づくと約5億円になります。※個別の事情を考慮しない場合
 
しかし、悪質なM&A仲介会社は、この本来の売却適正価格である5億円を売り手企業には知らせません。その代わり、買い手企業との間で「売却想定価格」として5億円を設定します。
 
通常のM&A仲介会社であれば、この価格で取引が成立した際、売り手企業・買い手企業の双方からそれぞれ5%(2500万円)の手数料を受け取り、合計5000万円の報酬を得ます。
 
しかし、悪質なM&A仲介会社は違います。彼らは売り手企業を巧みに誘導し、本来の適正価格を知らせないまま、相場よりはるかに低い価格で契約を結ばせるのです。
 
「どうしても2億円以上で買ってくれる会社が見つかりませんでした」
「ここで決断しなければ、市場価格はどんどん下がってしまいますよ」

 
このような言葉で、売り手企業に「この会社以外に買い手はいない」と錯覚させ、「今決めないと損をする」と焦らせるのです。これは、不動産会社が「こんな良い物件はすぐに埋まってしまうから、今決めないと損をしますよ」と急かしてくる手法に似ています。
 
M&Aの経験がない売り手企業の経営者は、適正な相場を判断する基準を持っていません。さらに、「手数料は不要」と謳う業者に対して、疑うことなく信用してしまいます。結果として、本来5億円で売れるはずの会社を、たった2億円で売却してしまうのです。
 
では、買い叩かれた3億円の差額は、どこに消えるのでしょうか。
 
この詐欺まがいのスキームは、買い手企業の承諾なしには成立しません。つまり、仲介会社と買い手企業が結託し、3億円を山分けしているのです。

悪質なM&A会社に騙されないためには?

基本的にM&Aアドバイザリー(助言)会社は、売り手企業、または買い手企業のどちらか一方と契約をするため、利益相反のリスクを避けやすいといえます。ただし、M&A仲介会社には独自のメリットもあるため、利用する際は、買い手企業との契約内容をしっかり確認することが重要です。
 
仲介会社には、利益相反を防ぐために売り手企業に対し、買い手企業とも契約している事実を開示する義務があります。しかし、実際には契約内容の詳細まで開示する企業は少ないのが現状です。
 
また、M&A仲介会社が守秘義務を理由に詳細な情報の開示を拒むと、売り手企業がそれ以上の情報を求めることが難しくなります。
 
さらに、守秘義務を理由に、買い手企業との手数料体系が非公開となることで、取引の透明性が損なわれ、不誠実なM&A仲介会社がはびこる要因にもなっています。これらの点は、M&A仲介制度の課題だといえるかもしれません。
 
しかし、売り手企業には、情報開示を拒むM&A仲介会社とは契約しないという選択肢があります。情報開示に消極的なM&A仲介会社は不誠実である可能性が高いため、慎重に取引を判断することが重要です。
 
また、M&A仲介会社を利用する場合は、特定の1社と契約する「専任契約」ではなく、複数の仲介会社と契約することで、より客観的に売買条件を把握しやすくなります。
 
M&Aがより身近になり、さまざまなトラブルが顕在化しています。どのようなリスクがあるのかを認識したうえで、M&A会社を選ぶことが大切なのではないでしょうか。

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