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売上30億円、営業利益は毎年1億円以上を計上、内部留保も十数億円規模の老舗化学品材料メーカーの会社売却の事例になります。
オーナーに後継者がいないため、会社売却を決めましたが、“所有と経営が分離”しており、オーナーと経営者が対立しているという問題がありました。
一般的に中小企業の場合、所有と経営が分離している会社の売却は進めにくくなります。
今回のケースでも経営方針の違いのほか、オーナーが所有する土地の賃借契約の値決め、株式の配当設定など、さまざまな場面で、オーナーと経営者は衝突をしていました。
オーナーには後継者がいないため、このままの経営形態を継続していくのは難しいと判断、会社の売却を決めました。
しかし、オーナーと経営陣の対立は深く、このような状態のままではM&Aもうまくいきそうにありませんでした。
現場の社員や主要取引先の声を慎重に集めると、現経営陣はほとんど機能していないことが判明しました。ここでオーナーは、経営陣の更迭という思い切った決断をします。
経営陣の相当な抵抗を乗り越えて、風通しの良くなった組織は実績を伸ばし、いよいよM&Aに向けた環境が整いました。
化学品材料の製造に携わる人は、ベンゼンなどの危険物を取り扱うなど、労働環境が厳しいことで知られています。また、賃金体制も決して高水準ではないなか、長年にわたって会社に尽くしてくれた従業員が大勢いました。
そのためオーナーは、売却金額を優先するよりも、従業員の雇用維持、そして、労働環境を改善してくれる会社への売却を強く希望していました。
従業員の雇用維持を会社売却の条件とする場合、同じ材料メーカーでは効率化のために統廃合されて、従業員がリストラされる可能性がありました。そのため、同業以外の売却先を探すことになりました。
結果的に、売却先となったのは大手総合商社でした。
この商社はある特許技術を取得したばかりでした。売手企業の化学品材料メーカーの技術や設備環境を利用すれば、特許技術の実用化、また製造を内製化することができることが評価されてM&Aが成立しました。
同業の競合企業に会社を売却したほうが、生産設備の統合をはじめシナジーが得やすいと思われますが、そうとは限りません。
買手企業が求めている条件によっては、異業種に売却したほうが、はるかに有利になることもあります。また、買手企業が異業種のほうが、従業員の雇用や取引先が守られやすい傾向があります。
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