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決算書では25億円の売上げを毎年のようにあげていて、営業利益は1億円から2億円の間で推移、中堅システム派遣会社としては、それほど悪くない数字でした。
しかし、これらすべてが粉飾決算でした。とはいえ、結果は上場企業に売却をすることができましたが、なぜリスクの高い案件が成立したのでしょうか。
売上げの25億円は正しく計上されていましたが、営業利益の1億円は、経費の入力ミスや意図的に経費を隠蔽するなど、さまざまな理由で会計処理が適当にされていました。
その結果、キャッシュフローはマイナスに陥り、借入金の返済が滞り、破産か、法的整理しか手段がない状況となっていました。
このような厳しい状況から、会社の売却を検討しました。
会社の実態を見ると、300名のシステム技術者はしっかりとした会社に派遣され、実績も上げていることが確認できました。この事実は、買手企業に評価されそうです。
しかし、粉飾決算をしたオーナーがいるため、会社を丸ごと売却する形はさすがに望めません。そこで、健全な事業だけを譲渡するスキームで買手企業を探したところ、ある上場企業が見つかり短期間で合意に至りました。
理由は買手企業が求めていた技術レベルと売手企業の技術者のレベルが一致したことでした。まさに、会社の強みを見つけるポイントの「従業員」の部分が当てはまりました。
このシステム派遣会社は、急な資金繰りの悪化で、年の瀬も差し迫った時期に事業譲渡、即破産という非常に難易度が高いスキームで実行せざるを得ませんでした。上場企業の買手側も非常にリスクが高い案件でしたが、なぜM&Aは成立したのでしょうか。
それは、売手企業の事業がしっかりとしていたからです。システム技術者の一人ひとりが、派遣先での仕事にしっかりと向き合い、その技術が評価されたからです。
また、派遣される先は別々でも、この会社の技術者は、それぞれの派遣先で起こった問題解決のため、携帯PCで常に連携が密にできる環境を作り上げていました。
本来あってはならないことですが、経営者が粉飾や横領をしているから会社を売れないと判断するのは早計です。真摯な姿勢で事業に取り組んでいる従業員には関係ありません。
そもそも、中小企業には「計算が甘い」「売上げに計上するかどうかが曖昧」「経費の計上の仕方に統一性がない」「あるはずの帳簿がない」といったミスが多いのは事実です。この程度のことは、ほとんどの中小企業では日常的に起こっています。
「違法な取引きをしている」「暴力団との付き合いがある」このような悪質なケースでは、会社の売却は難しくなりますが、単なる会計処理の甘さであれば、誤りを修正すればいいだけです。ある年の決算書を黒字にするために、経費を翌期にまわしたくらいの話であれば、その時点にさかのぼってペナルティを支払ったうえで修正することは不可能ではありません。
本業がしっかりと結果をだしていて、顧客からの評判もよければ、経営陣だけを入れ替えれば売却に対する問題はありません。元の会社が破産しようが、経営者が横領しようが、事業そのものは売ることができた事例になります。
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