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アルバイトを含めて従業員30名、売上2億円の小規模のウェブシステム開発会社ですが、リーマンショックの影響で営業不振。2000万円の債務超過に陥っていました。
しかし、第三者割当増資で債務超過を解消、円満なM&Aが実現した会社売却の事例になります。
目次
55歳の創業社長。従業員はアルバイトを含めて30名の小規模の会社です。事業は、ウェブシステムの開発・運用に特化していて、とくに検索をしたときに検索結果が上位に表示されるための「SEO対策」で評価が高く、大手企業のホームページ運営なども受託していました。
アルバイトを効率的に業務に従事させる仕組みを構築し、他社よりもコスト面で優位性があるのがこの会社の特徴です。
しかし、2008年のリーマンショック後の営業不振で、2年間で合計6000万円の赤字を計上してしまいました。2000万円ある銀行借入はリスケジュール(返済繰り延べ)状態にあり、銀行からは追加借入は受けられない状態でした。
ただ、その後の業務縮小と経営資源の集中投資によって業績は回復、営業利益は毎年500万円前後で安定しています。外部との連携で業績をさらに伸ばせるのであれば、会社を売却して雇われ社長になっても構わないということで相談に来られました。
ここで問題になるのが「債務超過でも会社を売却することは可能なのか」の1点になります。
一般的に債務超過の会社は、買手企業にとっては手を出しにくい印象ではあります。ただし、債務超過に陥った理由が明らかで、かつ現在の事業が黒字化しているのであれば、買手企業が見つかる可能性は十分にあります。
もちろん限度はあります。毎年の営業利益の10倍を超えるような債務超過は厳しいかもしれません。最大5年程度で債務超過が解消される見込みがあり、事業そのものは現実、取引先も継続していて、従業員のモラルの低下が起こっていなければ、通常の会社と同じように会社を売却することは可能です。ポイントは“事業が生きているかどうか”です。
まずは、なぜ債務超過に陥ってしまったのか、債務超過の内容を精査するところから始めました。
調査を進めると、リーマンショック後に納品先の倒産が相次ぎ、回収不能な売掛金が発生したり、プロジェクトが中断されたりなど、収入面で著しい減少が起こっていることがわかりました。しかし、社長の人柄もあり、外注先に対して予定通りの契約を継続していたことから、支出が収入を大幅に上回る事態に陥り、大きな赤字を発生させていました。
この出来事を教訓に、プロジェクト期間の細分化、短期化を進めるとともに、外注先との契約期間の短縮化にも取り組みました。貸し倒れリスクを最小限に抑えるため、取引先の与信チェックの厳格化も行い、業績が回復すると同時に黒字が恒常化しました。
仕事の依頼は継続してクライアントから発注されているので、運転資金の追加借入さえできれば事業を伸ばすことは可能です。しかし、銀行からの借入は難しく、社長本人も資金的な余裕がないため、そのチャンスを活かすことができません。資本力のある会社の傘下に入れば、事業が伸びるのは間違いない状況でした。
最終的には、消費者向けのウェブサイトを運営している会社が、3000万円の第三者割当増資をすることによって債務超過を解消、必要な運転資金を会社に提供するM&Aが成立しました。
評価されたポイントは、買手企業の既存顧客と競合しないことのほか、社長の報酬すべてを銀行返済に回していた社長の誠実さが高く評価されました。株主となった買手企業からの発注もあり、営業利益は1000万円の水準まで上昇、社長も継続できる円満なM&Aが実現しました。
今回のケースのように債務超過でも会社を売却することは可能です。そのためには、目の前にある事業をしっかりと社員が向き合っていること、誠実に債務超過に向かっている姿勢も重要になります。大切なことは、債務超過にとらわれず、本業をもう一度見直すことです。
債務超過がネックになり、会社としては高い評価が得られなくても、どこかの企業グループの機能子会社になり、一つの商圏で安定的な経営を続ける方策もあります。
広く社会全般に供給できる優れた技術やサービスでなければ、会社を売却することができないというわけではなく、ある特定の会社だけにぴったりとはまるような形で、会社が存続できるケースもあります。
債務超過の場合は、債務超過の理由が継続的な赤字によるものではなく、過去の負の遺産がそのまま残っているだけという点です。原因が明確で一時的、現状がうまく回っていれば会社を売却できる可能性はあります。
逆に毎年のように赤字が常態化していて、それを断ち切る手立てさえなく、債務超過が継続的に増えている場合は、傷が浅いうちに一刻も早く事業から撤退するべきです。同じ債務超過でも、その質を見極めることが重要です。
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