M&Aというと、「自分の会社が、誰かの手に渡ってしまうのか…」という抵抗感を抱く経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
 
しかし、ぜひそのイメージを少しだけ見直してみてください。中小企業のM&Aは、後継者不在という深刻な課題に直面しているオーナー経営者にとって、事業承継を実現し、会社の成長と発展を促し、従業員の雇用を維持し、そしてオーナーご自身の豊かなセカンドライフへと繋がる、非常に有効な選択肢となり得るのです。
 
例えば、会社が持つ独自の強みに魅力を感じた企業と手を組むことで、販路の拡大、新たな技術の導入、そしてこれまで以上の事業成長の機会が生まれる可能性があります。また、従業員にとっても、より安定した経営基盤のもとで、安心して働き続けられる環境が提供されることが期待できます。
 
近年、中小企業のM&Aは増加傾向にあり、その件数は年々増加しています。多くのオーナー経営者が、M&Aを単なる会社の売却としてではなく、「事業承継」と「成長戦略」の両面から積極的に検討していることが窺えます。

「後継者がいない」という悩みを抱えるオーナー経営者にとって、M&Aは多くのメリットをもたらす有効な解決策となり得ます。
 
● 事業承継の実現
後継者が見つからない状況で、オーナー経営者が最も気がかりなのは、「大切な会社を誰に託せば良いのか」という点ではないでしょうか。
 
長年大切に育ててきた会社、従業員の生活、そして気づき上げてきた取引先との信頼関係。これらを自身の代で終われ褪せてしまうことは、非常につらい選択になるかと思います。
 
しかし、M&Aという選択肢を選ぶことで、会社は新たな買い手企業に引き継がれ、事業を存続させ、未来へと繋ぐことができます。
 
● 従業員の雇用維持
オーナー経営者が廃業を選択した場合、従業員は職を失うことになります。
 
しかし、M&Aによって会社が存続すれば、従業員は新たな雇用主のもとで安心して働き続けることができます。これは、会社を支えてきた従業員の雇用を守り、安心して働き続けられる環境を提供することで、その未来に貢献することに繋がります。
 
● 取引先との関係維持
長年にわたり築き上げてきた取引先との信頼関係は、会社の大きな財産です。廃業してしまうと、その関係も途絶えることになります。
 
しかし、M&Aによって事業が継続されることで、これまで培ってきた取引先との関係も維持され、安定した事業活動を続けることができます。
 
取引先にとっても、これまでと変わらず安心して取引を継続できることは大きなメリットです。
 
● オーナー経営者の引退後の生活設計
経営に尽力されてきたオーナー経営者にとって、引退後の生活設計は重要な課題です。M&Aによって、会社を適切な価格で譲渡することで、オーナーは長年の労苦に見合う対価を得て、安心してセカンドライフを送ることができます。
 
資金的な不安を解消し、新たな趣味や目標に時間を費やすなど、充実した引退後の生活を送ることが可能になります。
 
● 会社のさらなる成長・発展
M&Aの相手先によっては、会社がこれまで以上に大きく成長・発展する可能性があります。
 
大手企業や、あなたの会社のシナジー効果のある企業に譲渡することで、新たな販路の開拓、最新技術の導入、資金調達力の強化などが期待できます。
 
自社だけでは難しかった事業展開も可能になり、会社は新たなステージへと飛躍するチャンスをつかむことが可能です。
 
● 地域経済への貢献

会社が地域に根ざし、雇用を生み出してきた場合、その存続は地域経済にとっても重要な意味を持ちます。
 
廃業は地域経済の縮小に繋がりかねませんが、M&Aによって事業が継続され、雇用が維持されることは、地域経済の活性化にも貢献します。
 
このように、M&Aは後継者不在という悩みを抱えるオーナー経営者にとって、多くの具体的なメリットをもたらす可能性があります。

当社では、後継者不在に悩むオーナー経営者様のM&Aを多数支援しており、その中から、従業員5名の小さな旅行代理店が後継者不在のため会社売却を成功させた事例をご紹介します。
 
■背景
60歳のオーナー社長が15年間経営してきた小さな旅行会社でしたが、体力の限界を感じ売却を決意。
 
年商1億円に対し、収支はほぼゼロ。数千万円の借入がある状況でした。社長は売却希望額を年商と同額の1億円とし、売却後も5年間社長業を継続したいと考えていました。
 
■会社の評価ポイント
財務状況は良好とは言えませんでしたが、磨き上げの過程で、きちんとメンテナンスされた数千件のホームステイ先のリストを保有していました。
 
■M&A成立
大手旅行代理店がこのリストの価値を評価し、約9000万円でM&Aが成立しました。
 
また、社長の希望通り、今後5年間は年2000万円の報酬で、社長業を継続することになりました。
 
■この事例の教訓
買い手を見つける前に、会社の価値を整理する磨き上げを実施したことにより、決算書の数字だけではわからない無形の企業価値を発見することができました。この無形の企業価値がM&Aの成否を左右することが多々あります。
 
会社売却を検討する際には、事前の磨き上げで自社の価値を高めることが重要です。

M&Aという選択肢について、具体的なイメージはできましたでしょうか。最後に、オーナー経営者の皆様からよくいただく質問をまとめました。

M&Aにかかる費用は、ご依頼されるM&A仲介会社やM&Aアドバイザリー（助言）会社によって異なります。
 
主な費用項目としては、以下のものが挙げられます。

 
M&A会社によっては、成功報酬のみで対応している場合もあります。そのため、複数のM&A会社に料金体系の詳細や提供されるサービス内容について詳しく確認いただくことを勧めします。

M&Aの初期段階においては、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることが非常に重要です。
 
信頼できるM&A会社は、秘密保持契約（NDA）を締結し、厳格な情報管理体制を構築します。
 
従業員や取引先への説明は、基本合意締結後など、適切なタイミングを見計らって行われるのが一般的です。
 
M&A会社と緊密に連携を取りながら、慎重に進めることで、情報漏洩のリスクを抑制することが可能です。

M&Aの相手探しは、M&A会社に依頼するのが一般的です。M&A会社は、会社の情報や希望条件に基づき、最適な候補先を探し、交渉をサポートします。
 
また、金融機関や事業承継・引継ぎ支援センターなども情報を提供してくれる場合があります。
 
自社で独自に探すことも可能ですが、専門的な知識や交渉が必要となるため、専門家のサポートを得るのが効率的かと思います。

M&Aの交渉においては、まず相手企業との間で基本合意書を締結し、その後、詳細なデューデリジェンスを実施した上で、最終的な譲渡契約を締結するという流れが一般的です。
 
交渉においては、譲渡価格はもちろんのこと、従業員の待遇、事業の継続性、経営方針など、多岐にわたる重要な項目について協議が行われます。
 
M&A会社は、交渉を全面的にサポートし、依頼者の意向が最大限に反映されるよう尽力します。
 
※ただし、M&A仲介会社とM&Aアドバイザリー（助言）会社では、提供するサービスの構造が異なります。そのため、それぞれの会社の特徴を理解しておくことが重要です。

M&A成立後の従業員の待遇は、買収企業の経営方針によって異なります。
 
一般的には、雇用条件が維持されることが多いものの、買収企業が同業の場合には、経営効率化などの観点から人員配置の見直しが行われる可能性もあります。そのため、待遇に関する詳細については、交渉の段階でしっかりと確認することが重要です。
 
従業員の雇用維持をM&Aにおける重要な目的の一つとする場合は、その旨を明確に買収企業に伝えることが肝要です。

M&Aにかかる時間は、案件の規模や内容によって大きく異なりますが、一般的には数カ月から1、2年程度の期間を要することが多いです。
 
相手企業の探索から交渉、契約締結、そしてクロージングといった複数の段階を経るため、相応の期間を要することをあらかじめ理解しておく必要があります。

M&Aは、慎重な準備と適切なサポートがあれば、高い確率で成功に導くことが可能です。
 
しかし、事前の調査不足や交渉の失敗などにより、必ずしも成功するとは限りません。信頼できるM&A会社に依頼し、しっかりと連携を取りながら進めることが、M&Aを成功させるための重要なポイントとなります。

後継者不在という深刻な課題に対して、M&Aがもたらす可能性についてご紹介しましたが、改めて強調したいのは、M&Aは決してネガティブな選択肢ではなく、会社の未来を切り拓くための有効な手段であるということです。
 
長年、会社を支え、発展させてきたオーナー経営者の皆さまが、後継者不在という問題に直面し、様々な葛藤を抱えていらっしゃることと存じます。少しでもM&Aにご関心をお持ちいただけましたら、ぜひご相談ください。
 
弊社では、大手上場企業から、中堅企業、小規模企業まで、さまざまな規模のM&Aをサポートしてきました。会社の状況をヒアリングさせていただいた上で、最適なプランをご提案いたします。ご不安なこと、疑問に思うことなど、どうぞ遠慮なくお話ください。
 
M&Aは、大切な会社と従業員の未来を守り、オーナー経営者の新たな人生を豊かに彩る可能性を秘めています。そのような未来の実現に向けて、私たちは全力でサポートいたします。