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親族内承継をする場合、自社の株式の評価額を下げることが基本の対策になります。
ここでは、自社の株式の評価を下げるためには、どのような取組みをすればよいのかをまとめました。
目次
2015年1月から、相続税の最高税率が従来の50%から55%(相続財産の評価額が6億円超の場合)に変更となりました。
例えば、オーナー経営者の長男が会社の株式10億円を相続した場合、4億7800万円の相続税が発生することになります。
金額 | 税率/控除額 |
---|---|
1000万円以下 | 税率10%(控除額:-) |
3000万円以下 | 税率15%(控除額:50万円) |
5000万円以下 | 税率20%(控除額:200万円) |
1億円以下 | 税率30%(控除額:700万円) |
2億円以下 | 税率40%(控除額:1700万円) |
3億円以下 | 税率45%(控除額:2700万円) |
6億円以下 | 税率50%(控除額:4200万円) |
6億円超 | 税率55%(控除額:7200万円) |
国税庁:相続税の税率
相続税は現金での一括納付が原則になります。生前贈与などで一定の資産が分割されていたとしても、一度に多額の相続税を支払うことは難しく、会社や個人の資産を担保にして銀行から借入して納税することも珍しくありません。
後継者が困らないようにするためにも、親族内承継が前提の場合は、計画的に株式の評価額を引き下げる対策が重要になります。
相続税や贈与税は法人税と異なり、計画的に対策をすれば納税額を抑えることができます。
株式の評価額を下げるための代表的な対策は、利益の圧縮、資産の整理、組織の再編などがあります。
市場で取引されていない非上場企業の株式の評価額を算出する方法には「類似業種比準価額方式」や「純資産価額方式」などがあります。
参考:非上場企業の株価の調べ方や計算方法について
評価時の要素を下げることで、株式の評価額を下げることができますが、具体的には以下のような取組みがあります。
持株会社を通じて、事業会社の株式を間接的に所有している場合、株式の評価額の計算方法が変わります。事業会社を持株会社(HD)にしたり、一般社団法人に転換することで、株式の評価額を下げる取組みもあります。
業績が好調で事業が伸びている場合、株式の評価額が上がり、相続財産が増えてしまいます。株式の評価額が上がる前に、持株会社を設立して、事業会社の株式を譲渡することで、相続税の負担を抑えることができます。
持株会社に事業会社の株式を譲渡することは、売買による株式の移転になるので、移転した株式は将来の相続財産に含まれなくなります。そのため、遺留分減殺請求による経営権の侵害を受ける心配がなくなります。
持株会社に事業会社の株式を譲渡するため、株式を現金化することができます。そのため、相続時に後継者以外の相続人に財産を分配しやすくなります。
株式の評価額を下げるほかにも、相続税を抑える方法として、課税対象となる財産を減らす取組みもあります。
不要な不動産を売却して、より有効活用ができるマンションなどの賃貸建物などに買い換えることで、相続財産の課税価額を下げることができます。
またこの方法で、推定相続人に賃貸建物を贈与すれば、賃貸収入で将来発生する相続税の納税資金をつくることも可能になります。
後継者に計画的に贈与することで、基礎控除額を利用すれば税負担を軽減させることができます。
贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方式があります。しかし贈与税は、相続税の補完税なので、相続税に比べて税額が高くなるように設定されています。
どちらが良いのかシミュレーションをして、計画的に進めることが大切です。
暦年課税のメリットは、110万円の基礎控除額が毎年使えることです。少額ずつ贈与すれば、金額の制限なく非課税で贈与することができます。計画的に利用すれば、大きく節税することが可能になります。
相続時精算課税制度のメリットは、累計で2500万円まではいったん非課税で財産を贈与することができます。この制度を使って贈与された財産は、相続時に相続税の課税対象になりますが、早期に贈与、運用することで、将来の相続税の納税に備えて資産形成をすることが可能になります。
暦年課税、相続時精算課税を利用するにあたっては、以下のような要件があります。
暦年課税 | 相続時精算課税制度 | |
---|---|---|
贈与者 | 制限なし | 60歳以上の親または祖父母 |
対象者 | 制限なし | 18歳以上の子どもや孫 ※年齢は贈与の年の1月1日現在の満年齢 |
課税価格 | 贈与財産をすべて合計 | 相続時精算課税を選択した贈与者ごと |
非課税枠 | 年間110万円 | 累計2,500万円 |
税率 | 110万円を超えた場合は税率10~55% | 2,500万円を超えた額の20% |
方式の変更 | 暦年課税方式→相続時精算課税方式への変更可能 | 相続時精算課税方式→暦年課税方式への変更不可 |
国税庁:贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁:相続時精算課税の選択
生命保険や役員退職金などの非課税枠を活用する方法もあります。
生命保険の受取金は上記の計算式で算出され、一定額まで非課税になります。事前に将来必要な相続税額を試算し、納税資金として必要な金額を受け取れる生命保険を契約するといった方法があります。
生命保険金は、原則、受取人の固有の財産になります。そのため遺産分割協議の対象から外れるので、相続させたい人に確実に相続させることができます。
役員退職金は上記の計算式で算出され、一定額まで非課税になります。また、同規模・同業種の支給額と比較して妥当である金額までは会社の損金になるため、株式の評価額も下げることができます。
以上のように、親族内承継の場合は、株価の評価を下げる対策が重要な取組みになります。そして親族内承継で、もう一つ重要なのが、株式の集約になります。
株式の生前贈与は確かに株価の評価を下げるには有効な手段になります。しかし、後継者を誰にするかを考えず、例えば、妻・長男・次男・長女にと無配慮に株を分散させると、「経営と所有」が分離する原因になります。
自社の株の一部を従業員に割り当てて、株式の評価を下げるという方法もありますが、これもやりすぎると、株の分散が心配なうえ、後日の買戻しに負担が生じることもあります。
親族内承継は、後継者の支配権確保をしっかりと意識しながら、株価の評価を下げる取組みが重要になります。
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